得票率で読み解く! 2021年浦安市長選挙

2021年03月25日

2021年3月21日、浦安市長選挙の投開票が行われました。

2名の立候補者で争われた結果、現職の内田悦嗣氏が2回目の当選を果たし、元職の松崎秀樹氏は次点となりました。

今回はこの選挙結果について「得票率」を軸に分析・考察を進めて参ります。

投票率は相変わらず低かった

当日有権者数は137,278人、投票した人の総数は62,786(うち有効投票数61,863票)で、投票率は45.74%、棄権率でいうと54.26%(小数点以下2桁未満を四捨五入)となりました。

当選した内田氏の得票数は36,425票、松崎氏は25,438票と、接戦が予想された割には10,000以上の票差が付く結果となりました。

さて、こちらの円グラフをご覧ください。これは当日の全有権者数を100とした場合の、各候補の得票率を示したものです。
選挙ではよく得票数の多い・少ないが話題になりますが、 有権者総数などの数値はその時々で変容します。そこで、結果を比較する場合は絶対数ではなく、得票の「率」に注目したいと思います。

グラフを見ると、今回の結果ではごく大雑把に言って、浦安で選挙権を持つ人のおよそ1/4が内田氏に投票していることがわかります。一方、2位の松崎氏も20%程度の得票を獲得しており、「大差」というほどの票差ではなかったと言えるでしょう。

そして改めて、半数以上が棄権しているという事実に驚かされます。

では、これを過去の市長選結果と比較してみましょう。

過去3回の市長選、結果はどうだったのか

こちらのグラフは、過去3回の市長選結果を同じようにグラフ化したものです。左から(モバイルでご覧の方は上から)2017年、2014年、2010年となっています。

一見して分かるのは、イエローで表した「棄権」層が、常に過半数を占めている点です。つまり今回の市長選だけが低投票率だったわけではなく、低い投票率がずっと横ばいで推移しているのです。
そのため今回の低い投票率の原因を「荒天の予報が影響した」「コロナで外出控えがあった」等の今回に限った理由に求めるのは、当を得ていません。

また当選者の得票率は、グラフ中ブルーの面積で示している通り、おおむね20~25%あたりで推移しています。2021年は候補者が2人しかいなかったためか25%を少し越えましたが、やはり毎回それほど大きくは変化していないことが分かります。
このことから、

「浦安市では毎回半数以下しか選挙に行かず、有権者の20~25%は当選した候補に投票している」

という仮説が導かれます。

どの回も、当選した候補者は自民党系でした。そして複数の現職市議会議員が支援を表明する候補でもあった、という特徴があります。基礎票としての組織票・固定票をベースとしたうえでの勝利、とみてよいでしょう。

過去3回は、それに対する対抗軸候補が出馬しましたが、今回2021年は共に市長経験者同士の対決でした。基礎票の行方が注目されましたが、17名もの市議の支持を獲得し、政党支援も受けた現職の内田候補がそれを制したようです。

2006年の市長選は、やや様相が違っていた

ここで示しているグラフは、遡ること4期前の、2006年市長選のものです。15年以上市内に暮らしておられる方は記憶にあると思いますが、この時はおそらく過去5回の中で、最もアツい選挙戦が展開されたのではないかと思われる回でした。

それでも、棄権率は相変わらず54.29%と低調です。天気がどうであろうと、候補者が何人立とうと、争点があろうとなかろうと、投票に行かない層はこの頃から既に安定の過半数を示しています。

詳細は割愛しますが、この時は疑惑が取りざたされた現職(当時)の松崎氏に対抗して、3人の候補者が健闘しました。そのため極端に得票の少ない候補者はおらず、松崎氏は15%に満たない薄氷の勝利となりました。次点の折本氏は1位に肉薄する勢いで迫り、他の2名と合わせた「非・松崎」票は、30.35%と圧倒的に優勢です。変な言い方ですが、ここに属す少なからぬ層が、浦安における「固定的な浮動票(選挙にはいくが自民系の固定票に属さない層)」ではないかと思われます。

この時の勢いを得て、折本氏は翌年行われた市議選では2位以下に大差をつけてトップ当選を果たします。以後も市長選の有力候補と目されてきましたが、上に示したグラフを見ると、その影響力が回を重ねるごとに低下している様子が見てとれます。

鍵を握った?「固定的浮動票」層

ここでもう一度、前回2017年の選挙結果グラフを見てみましょう。

得票3位の岡野氏は、松崎前市長(当時)の支援を受けて出馬しました(今回の選挙でも、岡野氏は市議としてただ一人、松崎候補の支持を表明しています)。2017年の岡野氏は、次点の折本氏に迫る勢いで健闘を見せています。

ここからは数字の遊びですが、この岡野氏の得票を=松崎票と仮定し、折本氏の得票を二分して内田・岡野の得票率にそれぞれ加算してみます。

  • 内田氏 20.77+6.17=26.94%
  • 岡野氏(松崎氏) 11.05+6.17=17.22%

すると、2021年の結果である

  • 内田氏 26.53%
  • 松崎氏 18.53%

にかなり近似した数値となりました。

現職・元職と保守系候補しか選択肢がなかった今回、行き場をなくした「固定的浮動票」が半分ずつ両陣営に流れたという推測が成り立ちます。
強力な「非・松崎」対抗軸であった折本票の半分が、今回松崎候補側に 回ったのだとしたら、やはり松崎氏は「健闘」に値する得票だったのかもしれません。

浦安市の未来・投票率アップのために

浦安市には、有権者の50%を越える「投票に行かない層」が存在します。多くが都内勤務のため生活圏である浦安の市政にあまり関心がないからなのか、あるいは市政への期待が特にないのか、今回示したデータだけでは理由は分かりません。

しかし、この層は選挙における最大派閥であり、候補者にとっては「手つかずの大票田」でもあります。
そしてそれ以上に「市民が政治に参加する地方民主主義」にとって非常にもったいないことだと言えるでしょう。

過去5回の選挙でも、候補者は知恵をしぼり手を尽くしたと思いますが、山は動きませんでした。どうすれば、この層を動かすことができるのでしょうか。

これまでの候補者は、各自具体的な政策を掲げて選挙戦を戦ってきました。しかし上のグラフでわかる通り、それは「投票に行かない層」には響きません。市政に関心のない人々に振り向いてもらい、投票率をアップさせるためには、おそらくもっと異なるアプローチが必要です。過去の国政選挙に見られたような「風を吹かせる」「山を動かす」を意図的に生み出す戦略です。

コロナ禍を契機として、社会は大きな転換の過渡期にあります。「新しい様式」が生まれ、レジ袋がなくなり、人々の意識が変わる場面が多く発生しています。
地方民主主義のあり方も、バージョンアップが求められるのではないでしょうか。

例えば、提示された政策を評価して選択する現在の選挙方法ではなく、まちのあり方を共につくりげていく。候補者が「私に付くか、他を選ぶか」と問いかけるのではなく、市民が皆でまちの未来像を描き、それを実施実現していく行政代表として市長が存在する。
「何かこれまでと違う、何かが変わる予感」を強くアピールすることに成功すれば、ひょっとすると「投票に行かない層」そして「固定的浮動票」が関心を示し、投票率の向上につながるのではないか、と思っています。

※なお、本ブログ記事は2006年12月より継続しているブログ「浦安コペルニクス総研」の姉妹記事として掲載しています。ご興味のある方はぜひそちらを合わせてご覧ください。

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